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AI時代、編集部はどう記事をつくるのか?...

AI時代、編集部はどう記事をつくるのか? 文春オンライン・ビュートピア・ダイヤモンド社・扶桑社、4つの現場が語った実務の現在地 

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2026年08月20日

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2026年8月4日、StoryHub株式会社はイベント「AI時代、編集部はどう記事をつくるのか?— 文春オンライン・ビュートピア・ダイヤモンド・扶桑社、4つの編集現場のリアル」を開催。オンライン配信も併用したハイブリッド形式での開催となりました。

生成AIによって、一定の品質を備えた文章を短時間でつくれるようになりました。では、記事をつくる工程のどこをAIに任せ、どこを人が担うのか。初稿作成が速くなることで、編集会議や制作体制、品質を確かめる方法はどう変わるのか。4つの現場から見えた実務の現在地をたどるイベントです。

本イベントには、『文春オンライン』編集長の池澤龍太氏、『ビュートピア』編集長の大徳明子氏、ダイヤモンド社 ブランディング事業局 ブランドスタジオ部 副部長の鈴木淳一氏、扶桑社で『Future Leaders Hub』と『女子SPA!』の編集長を務める江口裕人氏が登壇し、それぞれの編集現場における実践を共有しました。

イベントには約350名の申し込みがあり、終了後のアンケートでは「満足」「非常に満足」と回答した参加者が8割を超えるという結果に。各社の実践に対しては、「業務効率化というフェーズを超えて、編集という仕事のあり方そのものを問い直していると感じました」や「すぐ真似したいと感じました」といった声も寄せられました。

今回は大きな反響をいただいた本イベントのレポートをお届けします。

「書ける」と「良い記事をつくる」は違う。StoryHubが示した編集エージェント

冒頭では、StoryHub VP of Businessを務める高野政法が、サービスと新機能を紹介しました。高野が最初に示したのは、汎用生成AIで記事を「書ける」ことと、届けたい相手にとって良い記事をつくることとの間に、いくつもの編集工程があるという点です。StoryHubは、企画、文字起こし、構成、執筆、ブラッシュアップ、校正・校閲までを一つの環境で支援します。

(StoryHub VP of Business 高野政法)

その仕組みの一つが「レシピ」です。座談会、イベントレポート、インタビューなど、目的に合うレシピを選び、音声や動画、メモといった素材を加えることで、定型的な制作工程を進められます。

もう一つ、高野が紹介したのが新機能「編集エージェント」です。登録済みの一次情報と外部情報を参照して企画の切り口を提案し、適したレシピを選び、記事制作までつなげます。会場では、当日のイベント情報から速報記事の骨格を用意し、終了後に音源を加えて完成へ近づけるデモも披露されました。

企画から記事制作まで相談できる。StoryHubの「編集エージェント」をリリースしました

エージェンティックな編集とは?StoryHubの「編集エージェント」が持つ汎用AIにはない強みを解説

冒頭の説明で示された「書ける」と「良い記事をつくる」の違いは、その後の4つの発表にも形を変えて現れました。

文春オンラインが重視する、良質なコンテンツの「増幅」と「再現性」

最初に登壇した池澤氏は、13人で運営する文春オンライン編集部での活用を紹介しました。発表タイトルは「少数精鋭の編集部こそ、AIが武器になる」です。同社は2025年3月にStoryHubを本格導入し、現在は文春オンライン以外の部署にも利用を広げています。

出発点にあったのは、「日本のウェブ記事は多すぎる」という問題意識でした。池澤氏が示したデータでは、Yahoo!ニュースへの配信記事数は2023年11月時点の1日約7,500本から、2026年4月には約9,000本へ20%増加しました。一方、配信媒体数は730媒体から710媒体へ減少していました。

(Yahoo!ニュースへの1日当たりの配信記事数。池澤氏の発表資料より)

文春オンラインが配信する記事は、1日20本から25本、月間600本から800本ほどです。大規模な媒体では1日500本から800本が配信されるなか、手間をかけたスクープや独自記事も、数多くの後追い記事に埋もれやすくなります。

(文春オンライン編集長 池澤龍太氏)

そこで文春オンラインは、元記事の価値を増幅する派生コンテンツの制作にAIを活用しています。独自レシピを使って読者からの反響をまとめているほか、動画番組のテキスト化や、長い有料記事のダイジェスト作成にも用途を広げているといいます。

ただし、AIで本数を増やすこと自体を目的にはしていません。生成した記事は、池澤氏自身による最終確認を含め、2人から3人でチェックします。そのため、AIによって増えた記事は全体の1割から2割ほどにとどまるといいます。

池澤氏がもう一つ重視していたのが、記事の「再現性」です。ヒットした記事の要因を、テーマ、タイミング、書き手、フォーマットなどに分解し、仮説を立てて次の企画で試します。再び読まれたら、成功要因の解像度を上げます。この積み重ねは、AIへの指示を具体的にすることにもつながります。

記事を企画し、成功要因を言葉にし、ライターとのやり取りを通じて仕上げる。池澤氏は、もともと編集者が担ってきたこの仕事のあり方が、AIとの協働でも生きると捉えています。

(成功要因の言語化と編集者の協働経験が、AI活用に結びつく仕組み。池澤氏の発表資料より)

池澤氏が最後に示したのは、「本数をKPIにしない」「楽しくない仕事をAIに任せる」「空いた時間で楽しい仕事をする」という三つの考え方でした。

記事が多すぎる時代にAIを増産装置として使えば、編集部の仕事はさらに息苦しくなりかねません。池澤氏の発表は、浮いた時間をどこに振り向けるのかまで含めて、AI活用を設計する必要性を示していました。

文春オンライン編集長が語る、全社展開で記事数増加を実現した老舗出版社のAI活用戦略 | StoryHub株式会社

ビュートピアが示した、「初稿10分」で変わる仕事の進め方

続いて登壇した大徳氏は、新聞記者や雑誌編集長を経て、2018年に美容業界の経営情報に特化した「ビュートピア」を立ち上げました。現在は、2人の編集部員と外部ライターで月間100本の記事を公開・更新しています。発表の中心にあったのは、AI原稿をそのまま掲載できるかどうかではなく、10分でたたき台をつくることで仕事の進め方を変えられるという考えです。

(ビュートピア編集長 大徳明子氏)

具体例として紹介されたのは、ある社長対談記事です。7月8日の取材では、StoryHubのインタビューアプリ(※)を使い、取材当日に対話形式と物語仕立ての2種類のAI原稿を送付しました。その後、7月24日に人間が作成した原稿を送ったといいます。

※StoryHubのインタビューアプリでは、まだ聞いていない質問や、回答が薄い質問を取材中に確認できます。

取材直後に送った2種類のAI原稿は、どちらも全く直していない状態でした。赤字を入れてもらうためではなく、どちらのテイストが好みか、取材で話していない補足や掲載を避けたい内容があるかを確かめるためです。

(取材中に、まだ聞いていない質問や回答の濃淡を確認できるStoryHubのインタビューアプリ。大徳氏の発表資料より)

大徳氏は、書き手が時間をかけて書いた原稿ほど、修正を受け入れにくくなることがあると指摘します。短時間でたたき台を共有できれば、取材相手と早い段階で認識をそろえ、必要な追加取材にも入りやすくなります。変わるのは、執筆にかかる時間だけではなく、確認と対話を始めるタイミングです。

一方、人間がその後に書いた原稿には、AI原稿では抜け落ちていた短い掛け合いが残りました。印象的なエピソードとして紹介されたのが、社長対談のなかで一人の短パン姿に触れた一言です。記事の筋だけを追えば省ける会話でも、その場の空気や二人の関係性を伝えるうえでは意味を持ちます。取材相手からも「人間の記者にしか書けない掛け合いのリアルな表現」と評価されたといいます。

(人間の原稿に残った短い掛け合いと、取材相手からの評価。大徳氏の発表資料より)

電子カルテの導入事例では、開発者、監修者でもある導入企業の社長、導入企業をよく知るライターが集まったことで、専門性の高い記事につながりました。大徳氏は、対象について“世界で一番詳しい人”が集まれば、AIを使っても記事の強度は高められると説明しました。

その先に残る課題は、確認工程です。発表スライドには「ぜんぶ。すべての文字、すべての事実、すべてのリンクをチェックしている」と記されていました。初稿が速くなるほど、確認工程が次のボトルネックになります。そのため、確認を担える専門人材や人脈を持つ専門人材の育成・確保が課題として浮かび上がります。

(AI導入後に残る確認工程と、専門人材の育成・確保という課題。大徳氏の発表資料より)

ダイヤモンド社が進める、ベテランの知見を「型」にする試み

3人目の鈴木氏は、日之出出版に3年間在籍した後、宝島社で約17年間、雑誌や書籍などの編集に携わりました。その後、ITベンチャー2社でコンテンツ制作やマーケティングを担当し、2023年にダイヤモンド社へ入社しました。現在は、主要4媒体の広告制作を担うブランドスタジオ部の副部長を務めています。

(ダイヤモンド社 ブランディング事業局 ブランドスタジオ部 副部長 鈴木淳一氏)

鈴木氏が最初に示した課題は、編集部の人口構成でした。社内メンバーは7人で、60代1人、今年定年を迎える超ベテランが2人、50代が2人、40代と20代が各1人です。外部の編集者やライターにも50代、60代が多く、ベテランの退職による知識の流出、若手採用の難しさ、外部スタッフの不足が同時に深刻化しかねません。

(ダイヤモンド社ブランドスタジオ部の社内メンバー構成。鈴木氏の発表資料より)

そこで目指しているのが、人に依存せず、誰もがベテラン級の品質で記事をつくれる仕組みです。鈴木氏は、StoryHubによる専門用語や固有名詞を含む文字起こしを、「100%と言っても過言ではない精度」と評価しました。また、ホワイトペーパーを読み込んでつくるリード獲得用の文章は、従来は作成に1日から3日かかっていましたが、AIでたたき台を1分で生成できるようになりました。セミナー告知メールも、従来は数時間かかっていましたが、1分で生成できるようになったと報告しました。いずれも、人による添削を前提としています。

(文字起こしと定型文生成の時間短縮例。鈴木氏の発表資料より)

定型的な文章をレシピ化すると、編集者の仕事も変わります。文章を毎回ゼロから書く代わりに、成果の出た記事の構造や情報の順序を分析し、勝ちパターンをレシピへ落とし込みます。個人に蓄積されていた知見を、チームが使える型へ変える仕事です。

(成果の出た記事を分析し、勝ちパターンを「レシピ」として型化する試み。鈴木氏の発表資料より)

企画や取材の「仕込み」では、StoryHubの編集エージェントを使います。オリエンテーション前のリサーチ、構成案や質問案のたたき台をAIが用意し、その後の対話を通じて人が「ダイヤモンドらしさ」を加えます。完成した記事をデータベースに蓄積し、部署の共有資産にするところまでが一つの流れとして設計されています。

(リサーチ、構成案、質問案のたたき台を編集エージェントが担い、人は「ダイヤらしさ」を加える。鈴木氏の発表資料より)

鈴木氏は、AI導入のゴールを業務効率化にとどめず、組織の変革に置いています。汎用AIでは使い方や知識が個人の中に閉じやすいのに対し、目的が明確な特定業務向けAIなら、部内で実践を共有しやすいという見立てです。

とはいえ、ブランドスタジオ部の取り組みはまだ途上です。現在の記事制作では、ライターの原稿、StoryHubの原稿、汎用AIの出力を組み合わせています。鈴木氏は、ライターならではの温度感をどう残すかも含め、どこまでAIに任せるかを探っている段階だと率直に語りました。

取材の「仕込み」をAI と協業に——ダイヤモンド社が見つけた、StoryHubの編集エージェントの使い方

AI前提のメディアを立ち上げた扶桑社が直面する3つの難しさ

最後に登壇した江口氏は、扶桑社で書籍やウェブメディアの編集を経験し、現在は『Future Leaders Hub』と『女子SPA!』の編集長を務めています。『Future Leaders Hub』は2025年10月31日にローンチしたメディアで、ビジネスに興味のあるZ世代や就職活動を控える学生を主な読者とし、「経営」「キャリア」「ビジネスの未来」を扱っています。

(『Future Leaders Hub』編集長、『女子SPA!』編集長 江口裕人氏)

この編集部は、立ち上げ当初から「AIがあること」を前提としていました。あったのはAIツール、コミュニケーションが得意なメンバー、新媒体をつくる自由度です。一方、編集経験者は実質1人で、制作リソースや過去記事、制作ノウハウは限られていました。

StoryHubを介して「取材、生成AI、編集」のサイクルを繰り返すことで、限られた人員でも記事を安定して供給し、経験の浅いメンバーが短期間で実践を重ねられるようになりました。構想から約半年でローンチできたことも、AIを前提にした立ち上げの手応えとして語られました。

(限られた人員のなかで回す「取材、生成AI、編集」の制作サイクル。江口氏の発表資料より)

運用では、三つのことを心がけています。第一に、フィードバックはプロンプトではなく成果物に対して行い、メンバー自身が原稿から改善方法を逆算します。第二に、取材相手が原稿に赤字を入れたときは、現場の担当者が対案を用意します。第三に、原稿に対する「違和感」について、取材内容、AIへの指示、編集者の仕上げのどこに原因があるのかを分解します。初稿を速く得ることと、編集者として判断する経験を積むことを両立させるための設計です。

そのうえで江口氏が共有したのは、現在も答えの出ていない三つの悩みでした。

一つ目は、起業家を過度に英雄的に描く「盛りすぎるAI」です。形容詞や比喩を削り、事実と本人の言葉を加えて整えています。二つ目は、記事の均質化です。取材相手の層やテーマが近いと、似た質問、似た構成、似た印象の記事が増えるため、現状では人の手で個性を加えています。その結果、「AIを入れたのに、工数が減らない」という矛盾も生まれます。

(AIが生成した表現を、事実と本人の言葉を軸に整えた例。江口氏の発表資料より)

三つ目は、後継者問題とスキル継承の難しさです。プロンプト、編集フロー、フィードバックの型は共有できます。しかし、「なんか違う」と気づく感度、「この一言が刺さる」という判断、取材相手が本当に言いたかったことを拾う力は、簡単には共有できません。

(共有できる型と、共有しにくい編集スキルを整理した図。江口氏の発表資料より)

江口氏は、「それっぽい記事」をつくることは簡単でも、血が通った媒体であり続けるために必要な工数は、AIがなかった時代と比べてもあまり変わらないのではないかという考えを共有しました。江口氏の発表は、AIを前提に編集部を立ち上げたからこそ見えた手応えと限界の双方を隠さず示すものでした。

質疑応答で浮かび上がった、初稿作成が速くなった後に時間をどう使うか

各登壇者のセッション後に行われた質疑応答では、初稿を速くつくれるようになった後、人の仕事をどう組み直すかが繰り返し問われました。

池澤氏は、現状ではAIによる初稿にもかなり手を入れており、特に長いインタビューでは構成やエピソードの選択に人の手が必要だと説明しました。ライターには、その場が盛り上がる質問をすること、取材相手とのアポイントを取ること、専門知識をもとに話を聞き出すことといった役割もあります。工程の短縮分を、そのまま記事本数の増加に置き換えられるわけではありません。

鈴木氏への質問では、20代のメンバーがAIを積極的に使い、部内の会議で使い方を共有していることが紹介されました。用途が明確なツールは、活用方法を共有しやすいと鈴木氏は説明しました。ベテランの知見を若手に渡すだけでなく、若手によるAI活用からチームが学ぶ動きも始まっています。

江口氏は、編集長がすべての答えを出すのではなく、担当者に対案や根拠を用意してもらい、その判断に対してフィードバックする運用を説明しました。また、AIで制作速度が上がっても、記事数が単純に倍増する未来には慎重な見方を示しています。PVや媒体のブランド形成など、一本の記事がどのような価値を担うのかを明確にする方向へ進むのではないかという見立てです。

AIが「書く」を軽くするほど、編集部の判断が前に出る

4つの現場は、規模もビジネスモデルも異なります。文春オンラインは独自記事の価値を増幅し、ビュートピアは取材相手との確認を早く始め、ダイヤモンド社はベテランの知見を型へ変え、『Future Leaders Hub』は経験の浅いチームで制作と育成を同時に進めています。

共通していたのは、AIによって書く工程を軽くした先に、人の判断が残るという実感です。何を企画するか。どの事実を確かめるか。どの一言を残すか。似た記事が続いたとき、どこに違和感を覚えるか。そこには、各媒体が積み上げてきた編集の基準が表れます。

同時に、確認の負荷が消えたわけではありません。初稿作成が速くなれば、確認工程を担える人材の確保がボトルネックになります。再現性のある部分を型にするほど、型では捉えきれない価値をどう見つけるかも問われます。効率化と品質、標準化と個性は、どちらか一方を選べば済む関係ではありません。

再現できる仕事をどこまで型にするのか。確認を担える人材をどう育てるのか。共有しにくい「なんか違う」を、組織の判断基準へどう変えていくのか。

各社のセッションと質疑応答の終了後、会場では登壇者と参加者が言葉を交わす懇親会が開かれました。このイベントが示したのは、完成した一つの答えではなく、すでにAIを使う現場が向き合っている具体的な問いです。書く工程が軽くなるほど、編集部が何を良しとするかは、これまで以上に前面に出てきます。そんな現在地が見えた時間でした。

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