導入事例

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速報記事の作成時間を6分の1に短縮。「徳...

速報記事の作成時間を6分の1に短縮。「徳島新聞デジタル版」がStoryHubで実現した記者未経験メンバーの戦力化

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2026年03月02日

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一般社団法人徳島新聞社

徳島県内唯一の地元紙として、地域に根差した報道を続ける徳島新聞社。同社のデジタル編集部では、ウェブサイト「徳島新聞デジタル版」の運営において、記者経験の少ないスタッフがいかに迅速に速報記事を配信するかという課題に直面していました。2026年、同社はAI編集アシスタント「StoryHub」を導入。

その結果、記事作成時間を大幅に短縮しただけでなく、スタッフの心理的負担を軽減し、自律的なスキルアップまで実現しています。「地方紙の人材不足の中で、AIは『専門人材を一人雇う』ような感覚で活用できる」と語るデジタル編集部のお二人に、導入の経緯と効果をうかがいました。

プロフィール
森元 美鈴さん(写真右)
徳島新聞社 デジタル編集部

戎 七海さん(写真左)
徳島新聞社 デジタル編集部

導入前の課題
・イベント情報がバラバラの形式で届き、効率よく記事化することが困難だった。
・ デジタル編集部に記者経験者が少なく、未経験メンバーは「記事を書く」ことへの心理的ハードルが高かった。
・未経験者が事件・事故などの速報対応をする際、過去の類似記事を探して参考にする作業に時間がかかっていた。
・ 記事作成が可能な特定の人材に業務が依存し、担当者不在時の対応や初動の遅れが懸念されていた。

導入後の効果
・記事作成時間が従来の20〜30分から「5分足らず」へと劇的に短縮された。
・AIが「叩き台」を示すことで、未経験者でも迷わず執筆に着手できるようになった。
・担当者を問わず、誰でも一定品質の記事を出せるようになり、業務の属人化が解消された。
・AIの生成物を手本にすることで記事の型を学び、AIを使わずに自力で執筆できるスタッフも現れた。
・記事作成の効率化により配信本数が増え、サイトの訪問者数・PVも増加傾向にある。

記者経験の有無が「速報」対応のボトルネックに

——まず、貴社の事業内容について教えてください。

森元さん:徳島新聞社は、地域に根差した報道機関として、徳島県内のニュースや生活情報を新聞およびデジタル媒体を通じて発信しています。近年は「徳島新聞デジタル版」で速報を中心に、利便性を高めたコンテンツ提供に力を入れています。

「徳島新聞デジタル版」の日々の運営を担っているのが、私たちデジタル編集部です。記事コンテンツの配信だけでなく、特設ページの企画・制作、会員向けメール配信など、読者との接点をサイト上で広げる施策を担当しています。

——部署の体制と、StoryHub導入前に抱えていた課題について教えてください。

森元さん:デジタル編集部は、派遣スタッフを含めて全体で13名、そのうち主にデジタル版の運用に関わっているのが10名という体制です。業務はSNS発信やサイト管理なども含め、多岐にわたります。

なかでも大きな比重を占めるのが速報対応です。週に2回ほどのローテーションで担当者を割り当てていますが、1日あたりの本数は事件・事故の発生状況により変動し、多いときで10本程度になります。

最大の課題は、デジタル編集部内に記事執筆の経験がある「記者経験者」が少なかったことです。10名中、経験者は4名程度。残りのメンバーには記者経験がありませんでした。そのため、事件や事故が発生した際に「記事を書く」こと自体に対する心理的なハードルが非常に高かったのです。

——具体的にはどのような点で苦労されていたのでしょうか。

戎さん:経験がないスタッフが記事を書こうとすると、まず過去のデータベースから類似の事例を探し出し、その書き方やニュアンスを真似ることから始めなければなりません。この「参考記事を探す作業」に多くの時間がかかっていました。書くことへのハードルが高く、書ける人が休みの日は対応が難しくなるなど、速報体制として不安定な部分があったのです。

また、「情報とくしま」という県内イベント情報を掲載する面では、イベント情報がFAXで届く手書き文書やメール、PDFファイルなど、届く形式がバラバラでした。こちらを効率よく記事化できないかという課題もありました。加えて、派遣スタッフの方が2〜3年でローテーションするため、毎回新しい人に記事作成を引き継ぐのが大変だという課題もありました。スポーツ記録(野球のスコアやイニング情報など)も同様に、FAXや手書き、PDFなどバラバラな形式で情報が届いていたので、効率的に記事化したいと考えていました。

森元さん:StoryHubはPDFデータから簡単に記事を作れると知り、これなら「情報とくしま」で使えるのではないかと導入を検討し始めました。実際に試してみて手応えを感じ、その発展として速報記事にも活用するようになったのが現在の使い方につながっています。

記事ごとの最適な生成プロセスを「レシピ」として保存できることが決め手に

——課題解決のために、ほかのAIツールなどは検討されましたか?

森元さん:はい、当初はGeminiやChatGPTなどの汎用的な生成AIツールを使って、プロンプトを書いて試していました。ある程度の再現はできたのですが、毎回プロンプトを一から書くのが煩雑で、定着には至りませんでした。

——StoryHubを導入した決め手は何だったのでしょうか。

森元さん:最大の決め手は「レシピ機能」です。交通事故や火災など、事象ごとに最適な生成プロセスを「レシピ」として保存しておけるため、毎回プロンプトを書く必要がありません。「これを使えばすぐに記事が書ける」という手軽さが、現場にとって非常に魅力的でした。

また、トライアル期間中にStoryHubで生成した速報記事を、記者経験のあるデスク級のベテランに見てもらったところ、「これだけ書けるなら80点、90点だよ」と高く評価してもらえました。

他のツールのように事実と異なる情報(ハルシネーション)が勝手に混ざることもなく、読み込ませた情報のみで忠実に記事を作成してくれる点も安心材料でした。加えて、FAQが充実していることや、困ったときにStoryHubのチームに相談できる環境があることも心強く、導入を決めました。

作業時間は30分から5分へ。編集部スタッフの記事作成に対する心理的ハードルも低下

——現在の主な活用シーンを教えてください。

森元さん:メインは事件・事故、災害時の交通情報などの速報対応です。そのほか、行政や企業のプレスリリースをもとにした記事作成、「情報とくしま」面のイベント情報作成などで活用しています。

また、紙面に掲載された記事をデジタル版で公開する際の見出し作成にも使っています。紙面用の見出しをそのまま使うのではなく、デジタル向けに最適化したり、Yahoo!ニュース配信向けにクリックされやすい見出しを生成したりと、壁打ち相手として重宝しています。

——StoryHubを使う際のワークフローについて教えてください。

戎さん:導入前からチェック体制は確立していました。AIが生成した記事をそのまま出すのではなく、必ず「作成した本人が確認」し、その後に「第三者(デスク級の人員)がチェックする」という二重チェックを徹底しています。StoryHubが出してくれるのは「6〜7割の完成度」の初稿だと捉えています。残りの3〜4割を人間が仕上げるという前提があるからこそ、安心して活用できるのだと思います。

(StoryHubを活用して制作された記事の一覧)

(StoryHubを活用して制作された記事の一覧)

——導入によって、現場にはどのような変化がありましたか。

森元さん:劇的に変わったのは作業時間です。以前は類似記事を探して執筆するまでに20〜30分かかっていましたが、StoryHubを使えば素材をアップロードしてレシピを起動するだけなので、5分足らずで初稿が完成します。

定性的な面では、やはりスタッフの「心理的ハードル」が下がったことが大きいです。「ゼロから書かなくていい」「AIが『こう書けばいいんだよ』と示してくれる」という安心感があるため、記事作成への抵抗感が薄れました。

速報対応業務の属人化も解消され、どの曜日に、誰がローテーションに入っていても、事件・事故発生時に安定して対応できる体制が整いました。

AIが「先生」となり、未経験者が自力で書けるように

——記事作成の効率化以外に、予期せぬ効果などはありましたか。

森元さん:記事作成のスピードが上がったことで配信できるコンテンツの量自体が増えました。その結果、サイトの訪問者数やページビューも増加傾向にあります。もう一つ、非常に興味深い変化として、人材育成の効果が挙げられます。

戎さん:私は事件事故の取材経験がないなかでStoryHubを使い続け、何度もレシピを使って定型的な記事を作成するうちに、「こういう情報が来たら、こういう構成で書けばいいんだ」という"型"が身についてきました。あるとき、野焼きが延焼した火災の事案で、「今回はStoryHubを使わずに自分で書いてみました」と原稿を出したのです。まだ自信を持ってチェックに回せるほどではありませんが、自分でも書けるようになったという変化を実感しています。

森元さん:私たちはAIをあくまで「道具」だと考えています。「AIを使うと記者の書く力がなくなるのではないか」という懸念はよく聞かれますが、道具は使い方次第です。私たちの現場ではむしろ逆のことが起きました。AIが毎回安定した手本を示してくれることで、それが教育ツールのような役割を果たし、結果として未経験者が自力で記事を書けるようになったのです。これは嬉しい誤算でした。

データとの連携や多様なコンテンツへの活用を目指す

——今後、さらに取り組んでいきたいことはありますか。

森元さん:以前から課題として挙げていたスポーツ記録の記事化にも挑戦しています。野球のスコアや対戦表のように、FAXやPDFなどさまざまな形式で届くデータを自動で記事にしたいのですが、競技ごとに記載方法が異なるため、まだ研究段階です。ここはStoryHubとも連携しながら、引き続き取り組んでいきたいですね。

現在は速報などの短文記事が中心ですが、今後は取材インタビューの録音データからの記事化など、より長尺のコンテンツにも挑戦したいと考えています。講演会の音声活用などは、社内のガイドライン整備を進めながら試行している段階です。

機能面では、CMS(コンテンツ管理システム)との連携を期待しています。StoryHubで生成した記事をコピー&ペーストする手間をなくし、直接システムに入稿できるようになれば、さらなる効率化が図れます。

データ分析との統合も進めたいですね。「有料会員の読了率が高い記事構成」や「SNSでクリックされやすい紹介文」「メール開封率が上がる件名」など、自社の読者データに基づいた提案をAIが行ってくれるようになれば、より質の高いメディア運営が可能になると考えています。

——最後に、同じような課題を持つ地方メディアの方々へメッセージをお願いします。

森元さん:地方の新聞社では、どうしても人材リソースが限られます。自社でAI専門の技術者を雇ったり、プロンプトを開発したりするのはハードルが高いのが現実です。

その点、StoryHubは「AI専門の人材を一人雇う」ような感覚で導入できます。専門知識がなくてもすぐに業務に組み込むことができ、私たちのように少人数の組織でも、やるべき報道をしっかりとカバーできるようになります。AIと人間の役割分担を整理し、業務プロセスに組み込むことで、リソース不足の現場でも大きな成果が出せるはずです。

執筆: StoryHub(AI編集アシスタント)
編集:インクワイア
撮影:徳島新聞社提供