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動画の記事化にかかる時間を大幅に短縮。熊...

動画の記事化にかかる時間を大幅に短縮。熊本朝日放送がAIで実現したコンテンツ拡充と業務効率化の両立

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2026年05月11日

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熊本朝日放送株式会社

放送とデジタルの融合が進むメディア業界において、熊本朝日放送は報道と新設のデジタル編集部の両面で構造的な課題を抱えていました。報道現場では長時間のインタビュー文字起こしに伴う負担が常態化し、デジタル編集部では人手不足の中でWebサイトリニューアルに向けたコンテンツ拡充が求められていました。

「StoryHub」の導入により、10分の特集動画の記事化にかかる時間を従来の3〜4時間から1時間以内へと大幅に短縮。文字起こし作業の自動化によって記者の時間を確保し、実質的に戦力増に相当する成果を上げています。

同社の報道情報センター長の筒井孝彦さんは「作業時間が大幅に削減された」と語り、デジタル編集部長の舩津真弓さんは「工数的に重たい作業をAIが代行してくれることで、心理的なハードルも大きく下がった」と話します。両部門がどのようにAIを活用しているのかをお伝えします。

プロフィール
熊本朝日放送 報道情報センター 報道情報センター長
筒井 孝彦さん

熊本朝日放送 報道情報センター デジタル編集部長
舩津 真弓さん

導入前の課題
・長尺動画も含めたインタビュー文字起こし作業の効率化

・少人数体制でのWebサイトリニューアルに向けた情報番組を活用したコンテンツの拡充

・機密性の高い情報を安全に扱える、セキュリティと精度を兼ね備えたAIツールの導入

導入後の効果
・特集動画の記事化作業を、従来の3〜4時間から1時間以内へと大幅に短縮

・情報番組を活かしたWebメディアのコンテンツ拡充の実現

・人力で対応していた文字起こしの自動化による、記者の働き方改善

目次

報道現場とデジタル部門が抱えていた構造的課題

——お二人の普段の業務と、抱えていた課題について教えてください。

筒井さん:報道情報センターには報道制作部とデジタル編集部があり、私はセンター長として全体を統括しています。報道制作部は放送でのニュースや情報番組の制作を担当しており、最大の課題は長いインタビューの文字起こしでした。取材や放送が終わった後に、Wordで文字起こしを打ち直す作業が常態化していました。

長いドキュメンタリー番組や特集VTRを作る際、どこでどのような発言があったのかを把握するためには、インタビュー全体をテキスト化する必要があります。また、ある記者が取材した内容を別の記者が編集してVTRにする際の引き継ぎにもテキスト情報は不可欠です。この重労働を何とか解決したいと考えていました。

舩津さん:デジタル編集部は、2024年4月に新設された部署です。当初は私1名、現在は専任2名体制で運営しています。放送されたニュースをWebメディアの記事にしつつ、YouTube動画なども手掛けています。2024年10月のWebサイトリニューアルに向けて、ニュースだけでなく、情報番組のグルメ記事やお出かけ情報などのコンテンツを拡充したいという狙いがありました。

しかし、情報番組の特集は台本だけでは内容がわからず、映像を見ながら一から記事を書き直す必要があり、多大な時間がかかります。もう1名のスタッフはディレクター経験者で映像は経験がありますが、記事を素早く書くことには不慣れでした。かといって、ライターを新たに雇う予算の確保も難しく、限られた人数でどのようにコンテンツを増やすかが大きな壁となっていました。

系列局の実績とメディア特化のレシピが後押しした導入の決断

——StoryHubを選んだ背景について教えてください。

筒井さん:系列の担当者間でAIをどのように活用していくかについて情報交換を行っていました。その中で、山口朝日放送さんがStoryHubを使って原稿を書いているという話を聞き、かなり早い段階から注目していました。StoryHubはすでに系列局での導入実績があり、情報がどう扱われるかについて十分な説明を受けていたため、社内での承認プロセスにおいて大きなハードルにはなりませんでした。

AIを活用したいと考えても、一般的なAIツールのなかには、セキュリティ上の懸念があるものもあり、そのため行政文書のような機密性の高い情報を入れることができませんでした。一方で、若いメンバーはAIツールを使いたいと要望していたこともあり、会社として公式にセキュリティ的に安全なAIツールとしてStoryHubを導入できたことは非常に大きな意味がありました。

——最初にStoryHubを活用した際はどのような印象を持ちましたか?

舩津さん:デモを体験した際、想像以上の精度で動画からWebの特集記事に変換できることに驚きました。単なる文字起こしにとどまらず、グルメ記事から速報記事、インタビュー記事まで、多様な用途に対応できるレシピが用意されており、カスタマイズも可能でした。

メディアのことを熟知している方々が開発に携わっているため、プロンプトの指示が的確で、出力される結果の品質が高いと感じました。これなら私たちの部署が抱える課題を解決し、多様なコンテンツを効率よく作成する相棒になると確信しました。

作業の自動化と補助的活用による業務フローの再構築

——導入後、報道制作部ではどのような使い方をされていますか。

筒井さん:報道制作部では、主に長尺の特集映像の文字起こしに活用しています。夜間に動画ファイルをStoryHubにアップしておけば、朝出社したときには文字起こしが完成しています。既存で利用していた文字起こしソフトは、なんとなく雰囲気がわかる程度の精度でしたが、StoryHubは格段に精度が高く、内容が正確に把握できます。

また、長文の行政文書を読み込ませて要約を作成する使い方もしています。要約時に自動生成される項目が、ニュースのタイトルや小窓に入れる見出しの参考にもなり、非常に重宝しています。

——デジタル編集部での具体的な活用シーンについてもお聞かせください。

舩津さん:デジタル編集部では、情報番組のグルメ特集や独自取材のインタビュー動画を記事化する際の原稿作成に活用しています。最近では、熊本地震から10年の節目に合わせた独自のインタビュー動画を読み込ませて記事の土台を作りました。

また、まだ実際に活用はしていないのですが、有効な活用シーンも思い描いています。StoryHubのデモ期間中に熊本で記録的な大雨が発生した際、発生からしばらく張り付いて25本ほどの特別警報や緊急安全確保の速報記事を一人で書き続けました。事態が落ち着いた後、試しにレシピをつくってStoryHubに自治体が出す情報を入力してみたところ、的確な速報記事が生成できることを確認できました。

災害時の速報体制においても、情報を入力してチェックする人間がいれば、StoryHubを使って運用できる可能性を感じています。

労働時間の削減とコンテンツ拡充の両立

——導入によって得られた具体的な成果を教えてください。

舩津さん:物理的な時間短縮と、出せるコンテンツの量が大きく変化しました。たとえば、10分程度の長い特集動画をゼロから記事にする場合、従来は3〜4時間かかっており、着手すること自体に心理的なハードルがありました。それが現在では1時間以内で完了します。短いグルメ記事であれば30分から1時間程度で作成でき、作業時間は従来の半分以下になりました。

StoryHubに処理を任せている間に別の作業を進め、戻ってきたら構成を整えるという並行作業が可能になったため、作業に着手するハードルも大きく下がりました。最終的な編集は人間が行いますが、実質的にライターが1人増えたような効果を実感しており、リニューアル後のWebサイトにこれまで手付かずだった情報系コンテンツを継続的に出せるようになりました。

筒井さん:現場の記者やディレクターにヒアリングしたところ、文字起こし作業をAIが代行してくれることで、取材や制作に使える時間が増えたという声が多く上がっています。管理する側としても、業務の時間効率が大きく改善されたことは大きな成果です。

また、StoryHubの出力結果は、入力した情報のみに基づいており、取材していない余計な情報や推測を勝手に追加しないため、報道機関として非常に信頼できるツールだと評価しています。

記者育成とのバランスとAIを前提とした組織学習

——今後、さらなる活用を進めるにあたり、考えていることはありますか?

筒井さん:現在最も悩んでいるのは、原稿の執筆を完全にAIに任せるべきか、それとも記者の原稿作成能力を育成すべきかという点です。たとえば、警察から送られてくるFAXの文章を読み込ませれば立派な原稿が生成されますが、それに頼りすぎると記者が自分で原稿を書けなくなってしまうという危機感があります。

そのため、デスク以上の経験者は積極的に活用する一方で、若手記者には原稿を自分で書く訓練として、StoryHubでの原稿作成は制限しています。テキスト化や要約などの補助的な使い方は若手も含めて許可しており、AIの活用と記者としてのスキル育成のバランスをどう取るかは、今後の重要なテーマです。

舩津さん:デジタル編集部では、報道経験のないスタッフが速報記事などを出せるようになるためのサポートとしてAIを活用したいと考えています。

自分で記事を書く訓練をしつつ、AIが生成した構成を参考にすることで、報道経験が浅い人間でもチャレンジしながらスキルを上げていける環境を構築できると考えています。AIにすべてを委ねるのではなく、自分たちのスキルアップの相棒として共存していく運用を目指しています。

デジタルと放送の境界線を越える未来への展望

——最後に、今後の展開やStoryHubに期待する機能についてお聞かせください。

筒井さん:放送とデジタルの境界線はすでに無くなりつつあります。他局が圧倒的な量のデジタルコンテンツを出してくる中で、私たちも放送の時間を待たずに、どれだけ速く、どれだけ多くの速報を出していけるかが勝負になっています。

今後の要望としては、テキストだけでなく動画の編集機能への対応を期待しています。作成した映像から、15秒や30秒の番組宣伝用動画、あるいはショート動画などを自動生成できるようになれば、さらなる業務の効率化と多角的な展開が可能になります。

舩津さん:他局の事例のように、事件や事故の速報記事もデジタル部門から迅速に出していける体制を作りたいです。私がいなくても、報道経験の浅いスタッフがStoryHubを活用しながら正確な速報を出せるようになることが理想です。

AIは魔法の杖ではなく、あくまで人間が意図を持って指示を与え、最終的な責任を持ってチェックするツールです。これからも、限られたリソースの中で質の高い情報をスピーディーに届けるために、AIを組み込んだワークフローを洗練させていきたいですね。


執筆: StoryHub(AI編集アシスタント)
編集:インクワイア
撮影:熊本朝日放送 提供