
生成AIを番組制作からPRまでフル活用!~日テレアックスオンの実践例に学ぶ~
2025年06月30日
株式会社日テレアックスオン
「Club StoryHub」第4回が、2025年5月29日に開催されました。今回は、日テレアックスオンのプロデューサー本田芳穂氏をお招きして、テレビ番組制作・プレスリリース・WEBメディア運営など、幅広い業務においてどのように「StoryHub」を使っているのか、その活用例を伺いました。進行は、渡邉真洋(StoryHub 取締役COO)が務めました。
【登壇者プロフィール】
本田芳穂 氏(株式会社日テレアックスオン プロデューサー)
2012年、株式会社日テレアックスオン入社。「NEWS ZERO」「news every.」などの報道番組でディレクターを経験後、映画番組やCM制作のプロデューサーに。現在は、配信・放送コンテンツ「夜明け前のPLAYERS」、エンターテインメント総合ニュースメディア「entax(エンタックス)」のプロデューサーを務めるほか、新規事業開発やイベント企画立案にも携わる。
渡邉:本日は、日テレアックスオンの本田さんにお越しいただきました。本田さんはStoryHubを初期から積極的に使ってくださっていて、私の中では“StoryHubアンバサダー”です(笑)。
本田氏:よろしくお願いします。日テレアックスオンは日本テレビグループの制作会社で、日本テレビのテレビ番組や映画の制作だけでなく、代理店業務や字幕・解説放送、アーカイブ事業、PFI事業、グルメイベントの主催、映画や舞台等の自社IPコンテンツ製作など幅広く手がけています。
その中で私が担当しているのが、エンターテインメント総合ニュースメディア「entax(エンタックス)」です。2022年に立ち上げた新しいメディアです。私は専任ではないのですが、専任スタッフは7人いて、外部の方のお力を借りながら毎月約700本の記事を配信しています。
StoryHubは昨年10月にトライアルを始め、12月から正式に導入しました。記事制作では月50~60本ほど活用していますし、他の業務でも幅広く使っています。

渡邉:そんな本田さんに沢山聞きたいことがあり、トークテーマを用意しました。早速、「②番組制作にAIを活用!どんな効率化ができた?」についてお聞きします。
本田氏:今回、StoryHubとのコラボレーションで、フジテレビさんと日テレアックスオンが協力するプロジェクト『カメラマンが捉えた1995』に参加することができました。
この番組は、報道カメラマンお二人が企画した2時間のドキュメンタリーです。ひとりは少しディレクション経験があり、もうひとりはカメラマン一筋。彼らが1995年に最前線で撮影していた当時のカメラマンとともに、当時の映像を振り返り、1995年から2025年までの30年間を転換点として、何が起きたのか、カメラマンがどんな思いで撮影していたのか、どのように現在に繋がったのかを描いています。

テレビ局の方なら驚かれると思いますが、実際に制作しているのはこのお二人だけ。プロデューサーはいますが、ディレクターやADはいません。当時のカメラマンを含め、19人に20時間以上インタビューを行い、その膨大な素材の整理や構成にStoryHubを活用しました。
渡邉:本田さんはどのような立場で参加されたのですか?
本田氏:私はヘルプセンターのような役割で、StoryHubの使い方やプロンプト作成のアドバイスをしていました。
番組では、阪神・淡路大震災だけでなく地下鉄サリン事件や海外の事象のほか、野球の野茂英雄さんのメジャーリーグ移籍の話題など、ワンテーマだけでも特番ができるような出来事を5、6個も入れ込まなければならない中で、膨大なアーカイブの素材や映像をどう構成するかは、特に制作経験がないとすごく大変だったとお話しされていました。
その時にStoryHubのAIチャット機能に相談をして構成案を何パターンか出してもらって、「あ、なるほど、このシーンはこういう風にフックにできるのか」など、様々な気づきを得たとおっしゃっていました。「仲間が1人増えた」というような言い方もされていたので、孤独ではなく相談できる相手がいるというのは大きかったようです。
渡邉:番組だけでなく、記事も作成されたそうですね。
本田氏:はい。放送だけではなく、番組とは別にFNNプライムオンラインに記事を7本も書いていらっしゃいます。これらの記事はオンエア前に作成され、放送には使われなかったインタビューの内容を記事化したものです。
オンエアに乗らなかった素材を記事にして、マルチユースとして届けるという作業は非常に大変ですが、StoryHubの高精度な文字起こしと整理のおかげで可能になりました。
また、プレスリリースやEPG(電子番組ガイド)、オンエア本編とは別軸で必要な業務というところも、かなり助けになったと思っています。
渡邉:ほかにはどのような場面で活用されていましたか?
本田氏:番組を通して事前リサーチからインタビュー案、何より収録した素材の文字起こしでの助けが一番大きかったと伺っています。「文字起こしの精度の高さや手間の少なさは画期的だ」と感動していました。
取材前からオンエアに至るまで一貫してStoryHubというツールが非常に役立ったいい例だと思います。特に、カメラマン2人で作ったというところが、現場の人間からすると本当に信じられません。
今はどの局であっても、アーカイブ素材の扱い方が課題になっています。特に混乱の中で撮影されたものはメタデータが不十分で、それを再度キャプション付けし直すなどの作業では、AIの力を借りないと何百万、何千万時間分の素材があると人力では非常に大きな労力がかかります。そういう意味ではすごく助けになったと思います。
渡邉:番組の中では語りきれないカメラマンの話を"記事で深掘り"する、逆に記事を読んで興味を持ったカメラマンの話を"番組で見る"という相互の流れがあって、素晴らしいですね。
渡邉:次は「①エモさはAIでもつたわる?エンタメ記事をAIで作った話」についてお聞きします。
本田氏:「entax」はエンタメニュースサイトなので、ジャンルを問わず様々なエンタメ記事を掲載しています。AIによる記事作成にはStoryHubのオフィシャルレシピ(※)も使えますが、エンタメ記事に特化した独自レシピを作成しました。これは一番稼働率の高いレシピです。
記事は主に各媒体から届くプレスリリースをもとにしていますが、自分たちで取材した音声や映像からでもこのレシピを使えばうまく記事化できます。エンタメ記事には、客観性や軽快な文体が特に重要だと考え、プロンプトにもその点を強調しています。私は報道出身なので、用語やトレンドも意識してAIに指示しています。
ニュースサイトの読者のみなさんが求めているのは正確な情報なので、署名記事でなければ記者の主観は不要だと考えています。そのため、プロンプトでも“正確な情報”という点を繰り返し指示しています。SEO対策についてはまだ課題がありますが、何が「エモい」のかを言語化できていないので、それをどう表現するかは模索中で、プロンプトも10回以上修正してきました。今後も改善を続けていくつもりです。
エモさはAIでも伝えられると思いますし、特にClaude(クロード:生成AIモデル)は感情表現の語彙が豊富で、エンタメ記事にも活用できます。もし物足りなさを感じたら、「物足りない部分はなんなのか」を自分で言語化し、それを補うレシピを作るのが最適だと思います。
(※)「StoryHub」のレシピ機能とは、目的に合ったレシピを選択し、取材した素材(動画・音声・メモ)をアップロードするだけで、テキストコンテンツを自動に生成する機能です。
渡邉:“プレスリリースソムリエ”の本田さんにお聞きします。膨大に送られてくるプレスリリースの中から、どのような基準で取り扱うものを選んでいるのでしょうか?
本田氏:(笑)その肩書きは渡邉さんが勝手に付けたものですが、テレビ局時代から何千件ものプレスリリースの中から扱うものを選ぶ経験をしてきました。entaxでも同じように、日々たくさんのプレスリリースを目にしています。
選ぶ際には、新規性やパッと見たときのインパクト、キャストのバリューも大切ですが、特に重視しているのは「ストーリー性」です。

例えば「誰が何をした」「新商品が発売された」といった事実だけでは、テキスト記事でも映像でもすぐに終わってしまいます。取り上げる価値があるかどうかは、その裏にどんなストーリーがあるか、開発の背景や作り手の思いなど、伝えられる物語があるかどうかは重要だと考えています。プレスリリースを作る際も、ただ情報を並べるだけでなく、「ここを取材すると何が撮れるんだろう」「どんな話が聞けるのか」「どんな体験ができるのか」といった開発の背景や、誰かの思い、インパクトのあるストーリーがあると良いと思います。なので、自分でプレスリリース作成用のレシピを作るときには、この要素を必ず盛り込むように指示しています。ストーリーテリングは、情報発信においてとても重要だと考えています。
渡邉:インフォメーションや事実だけでなく、物語性が大切なのですね。
本田氏:はい。全ての案件にストーリーがあるわけではありませんが、受け手を引き込むストーリーの要素を意識してプレスリリースを作ることが大切だと思います。
本田氏:私は時々、プレスリリースの一歩手前にあたる企画書や概要書をAIチャットにアップロードし、「この資料をナラティブに説明してください」とAIに依頼することがあります。
「ストーリーを見つけ出してほしい」という視点でAIに問いかけると、「ここを取材すればこんなストーリーが作れますよ」「こうすれば5分の番組コーナーが作れますよ」といった提案が返ってきます。テレビの現場としても、そうした目線で企画を考えると、採用されたり形になる確率が高くなるのではないかと思っています。
たとえナラティブな物語になっていなくても、例えば「こういうことで困っている人がいる」「妊活をする人が増えていて、こんな声がある。だからこの商品が生まれた」といった背景があれば、それ自体が番組で取り上げる価値のあるストーリーになります。
渡邉:背景情報を与えることが大事と。AIもナラティブを作る際に背景を考えられますが、作成者の意図や一次情報をしっかり伝えることが重要ですね。

本田氏:その通りです。AIへのインプット次第でアウトプットも大きく変わります。人間にしか与えられない情報も多いので、概要欄だけでなく、聞き取ったメモや録音なども活用すると、自分自身の整理にもなり、より幅広いリリースが作れると思います。私自身、PRの経験はまだ浅いですが、日テレアックスオンが出しているプレスリリースも成長途中です。良いアドバイスがあれば、ぜひ教えていただきたいです。
本田氏:日テレアックスオンでは今年、新入社員研修の一環として、StoryHubを使った実習を行いました。2人1組でお互いにインタビューし合い記事にまとめるチーム、実際の番組をもとに記事を作るチームに分けて実施しました。
この研修の目的は、StoryHubを使えるようになってほしいということではなく、AIを使うことが当たり前になっている業界の流れを体感してもらうことです。若い世代にはAIに対する抵抗感なく、自然に触れてほしいと考えています。
AIの効率的な定着は日テレアックスオンの課題でもあります。これまでAIがなくても仕事はできていたため、新しいツールの導入には手間や負担を感じる人も多いと思います。特に生放送の現場はとても忙しいのですが、そんな中で地道にAI活用のデモンストレーションをしたりプロンプトの相談をうけたり、全社的な勉強会を3~4回行ってきました。

私自身、成功体験がないとAIは定着しないと考えています。実際に「仕事が楽になった」と感じられなければ、研修もノルマで終わってしまいます。今やAIは制作現場でテキストを生み出すほとんどの作業に使える段階に来ているので、未経験の人にも「怖くないよ」と寄り添いながら導入を進めています。今年はこの分野に本格的に力を入れるつもりです。日テレアックスオンは約800人の社員がいて、部署ごとに業務内容も大きく異なります。そのため、どのようにAIを導入すればよいか、他社の事例も参考にしたいと思っています。
渡邉:どの会社も同じ悩みを抱えていますね。AI好きな人はすぐに使い始めますが、残りの多くの人には「小さな成功体験」を現場で積ませることが大切だと思います。
本田氏:部署ごとに業務が大きく違う我々のような組織では全員に同じ研修をしても意味がありません。それぞれの現場で役立つツールや方法を提供することが重要です。特に企画書作成はコンテンツ会社として非常に重視しているところで、年間50~60本も提出する人もいます。AIを企画の相談相手にしたり、企画書からプレゼン資料を作る手間を減らしたり、全員の業務を「楽にする」こと、そして「面白くする」ことを目指していきたいです。
本田氏:EPG(電子番組表)とラテ(新聞に掲載される番組表)について、2種類のAIレシピを作成しています。番組の書き起こしや構成表をもとに、まず「良いEPGとは何か」をAIと一緒に定義しました。AIは文字数カウントがやや苦手ですが、精度は徐々に向上しています。
EPGは一般的に200字程度が規定ですが、私はまず長め(例えば250字や300字)に作成し、そこから200字に要約する2段階の方法をとっています。一度に短くまとめると文脈が崩れることがあるため、まずキャッチーな要約を作り、その後フォーマットに落とし込むようにしています。
また、「誤解を招かないよう正確な情報を」とAIに繰り返し指示しています。過去のEPGを3つほど例示し、それに合わせて作成するようにしています。レギュラー番組ならこの方法で十分ですが、複数の番組を担当している場合は、番組ごとにレシピを作ったほうが精度は上がると思います。
ラテも同様のアプローチですが、文字数や「良いラテ」の定義はEPGとは異なりますので変えています。この作業はプロデューサーにとって手間がかかるものなので、参考になれば嬉しいです。
渡邉:「良い〇〇とは何か」を定義することが大切ですね。AIと会社の価値観が異なる場合もあるので、しっかり定義し、お手本を示すことが重要だと思います。正解がないコンテンツ制作では、まず基準を作ることが効果的です。
本田氏:AIの再現性を活かすには、型が決まっているものほど取り組みやすいです。一度で完璧を目指すのではなく、段階的に作り上げていくのが良いと思います。

渡邉:インタビュー記事を作成するカスタムレシピでは、インタビュー対象者のタイプや記事の形式(ナラティブ形式、Q&A形式、対話形式、座談会形式など)、発言の引用スタイル(直接引用、間接引用、混合スタイル)などを細かくカスタマイズできます。設定を選ぶだけで、希望するアウトプットに近づけることができるのが特徴です。
議事録も同様に、会議タイプや要点整理形式、詳細に残したいトピックなどを設定できます。マスキング機能も追加予定で、特定の情報を隠すことも可能になります。
本田氏:私はインタビュー記事を作る際、対話形式とナラティブ形式の2種類を作って組み合わせる方法が気に入っています。対話形式は丁寧にまとめられ、ナラティブ形式は文章の中に引用が自然に入るので、両方の良いところを活かせます。
議事録については、「参加していない人にも分かるように」することを重視しています。要点整理形式を選ぶ場合でも、「省略や抜粋をし過ぎないでください」とAIに指示しています。会議に参加していない人が読んでも内容がきちんと伝わるよう、整理しつつも情報を省きすぎないよう心がけています。
本田氏:日テレアックスオンはentaxや番組制作など、さまざまなジャンルに取り組んでいます。特にWebメディア分野はまだ勉強中ですので、コラボレーションの機会があればぜひご連絡ください。
渡邉:社内でAI活用をもっと進めたいけれど、なかなかきっかけがないという会社は、本田さんにご相談いただければ、アンバサダーとして力になってくれるかもしれません。本日はありがとうございました。
<本田流StoryHubレシピ活用ポイント>
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執筆:StoryHub(AI編集アシスタント)
編集:インクワイア
撮影:関口達朗