
NBS長野放送、AIで番組制作効率化!「アラ還」が挑むローカルメディアの新たな可能性
2025年03月13日
株式会社長野放送
NBS長野放送の編成業務局長(取材時)を務める早川英治氏。35年以上にわたるキャリアの中で、アナウンサーから報道、そして編成幹部へと歩んできた。その豊富な経験を活かし、今、地方局の未来を見据えた新たな挑戦に取り組んでいる。

2024年12月31日、NBS長野放送は『「むなしさ」と生きる~善光寺大勧進栢木寛照貫主ときたやまおさむ「心」の対話~』という番組を放送した。善光寺大勧進の栢木寛照貫主と精神科医で作詞家のきたやまおさむ氏が、「むなしさと生きる」をテーマに、深い対話を繰り広げるという内容だ。この番組の企画・制作を手がけたのが早川氏だった。
実は、この番組制作スケジュール、収録から音効まで2週間余りしかない状況だったという。主なメンバーは早川氏と松尾恵氏(ディレクター・映像編集)の同年「アラ還」の二人。そこで、早川氏は新たな試みとしてStoryHub株式会社が提供するAI支援ニュース編集アシスタント「StoryHub(ストーリーハブ)」を番組制作の現場で活用することに。タイトなスケジュールの中、どのような場面でAIを駆使したのか、そのポイントや、ご自身が考えるローカル局の未来などについて伺った。

――「StoryHub」を知ったきっかけは?
早川氏:以前から付き合いのあるStoryHub社のシニアディレクター矢野修至氏がStoryHubというサービスを始めたと聞き、実際にどう使えるか、自分たちにどう役に立つのかを確かめたいと思い、使い始めました。
――今回『「むなしさ」と生きる』の制作で「StoryHub」を使われてみていかがでしたか?
早川氏:StoryHubは、コンテンツ制作における優秀なパートナーだと感じています。素材の文字起こしから要約、相談まで効率的に進めることができて、作業時間の短縮に繋がりました。
――どのような工程でStoryHubを使われたのでしょうか?
早川氏:事前準備として、自分の考えを整理したり、情報収集したりするのにStoryHubを使いました。関連書籍を読み込み“読書メモ”を作成、自分なりのコンセプトや進行表を作成し、StoryHubに「こんなテーマでこういう番組を作りたい」「ここに焦点を当てたらどうか」と投げかけるのですが、スタッフ同士だと先輩に意見しにくいなど少し遠慮するようなところがありますよね(笑)。StoryHubからは忖度のない評価が得られたので、番組内容をより深めることが出来ました。
――AIチャット機能を活用して考えを整理し、深めていかれたのですね。そのほかに、どのような場面で使われましたか?
早川氏:対談の文字起こし(約1時間半の素材)は、収録の当日にプロダクションから素材を送ってもらい、StoryHubにアップロードして約1時間(※1)で完了しました。おととし、同じシリーズの1本目を放送した時は、松尾ディレクターが手作業で文字起こしをおこなったのですが3日かかり疲れてクタクタに……。その時は放送まで1か月余りあったのでスケジュール自体には問題ありませんでしたが、今回、StoryHubを使い効率化がはかれたことはとても大きいです。
(※1)現在は機能向上により2時間を超えるような長尺の素材も15分程度で文字起こしが可能

――文字起こしだけでも大変な時間短縮に。AIに任せられるところをうまく活用されたわけですね。
早川氏:はい。収録当日の夕方には文字起こしが出来上がったので、自分やディレクターの中でも「この展開が面白かった」というように記憶も新しいわけで。熱量が高いうちに編集作業に入れるのはとても大きいと思います。
また、長野放送と地元出版社が共同運営しているwebマガジン「ARURA(アルラ)」に掲載する事前PR記事や、プライムオンライン用の放送後記事の作成では、レシピ機能(※2)を使って生成した文章をもとに、修正・加筆して完成させました。StoryHubを活用することで、多角的展開が可能になり、膨大な量の台本を限られた字数にまとめる作業が大幅に軽減されました。
StoryHubを使うことで、もうひとり優秀なスタッフが仲間に加わった、という印象です。
――StoryHubは心強い相棒ということですね!
●Webマガジン「ARURA(アルラ)」の記事
(※2)「StoryHub」のレシピ機能とは、目的に合ったレシピを選択し、取材した素材(動画・音声・メモ)をアップロードするだけで、テキストコンテンツを自動に生成する機能です。
――長野放送さんでは、様々な部署でStoryHubを使われているそうですが、どのような活用をされていますか?
早川氏:企画推進部では、ネット記事配信へのリライト、各種企画書づくり、アンケート集計などに積極的に活用しています。報道部では取材素材の文字起こし、配信記事のリライトなどに。その他の部署では、会議の議事録作成、番組内容についての法令確認などにも活用しています。
――放送局が「StoryHub」を導入する場合、気を付けたいこと・メリットをお聞かせください。

早川氏:StoryHubは“打ち出の小槌“のように振れば何でも飛び出す道具ではありません。情報セキュリティの問題をクリアした上で、単なるアウトプットツールではなく、考えを深め、より良いコンテンツを作るためのパートナーとして捉えることが重要です。よりよく使うためには、作成したいコンテンツの狙いや内容、素材などをヒトがしっかり把握・理解することが欠かせない。これは通常の番組制作における姿勢と何ら変わることはありません。
メリットは作業効率化、忖度のない評価による番組内容の深化、少人数でも展開の幅を拡大することができるといったことでしょうか。効率化によって生まれた時間を、新たな取り組みや地域貢献に充てられることは、とても助かっています。
――今回番組には信州大学の学生たちも参加されていましたが、その意図は?また、若い方たちの反応はいかがでしたか?
早川氏:番組をより面白くするため、高齢者だけでなく若者の意見も取り入れる必要性を感じ、地元の信州大学混声合唱団の学生さんたちに声をかけさせていただきました。みなさん、真面目に質問し、番組テーマについて真剣に考えている様子が印象的で、栢木貫主やきたやま氏も感心されていました。合唱団としては、きたやま氏が作詞を手掛けた名曲「あの素晴しい愛をもう一度」を作詞家本人(作詞家名義は北山修)の前で歌う貴重な機会となり、大変喜んでいました。
――このように地域との連携を大切にされている長野放送さんですが、長野県内の書店チェーンでは、今回の番組テーマのきっかけとなった、きたやま氏の著作『「むなしさ」の味わい方』(岩波書店)の売り上げが伸びたそうですね!

早川氏:はい。岩波書店さまからうれしいお知らせをいただきました。放送前に、長野県内の書店チェーンさんが番組と絡めたコーナーを設けてくださるなどのご協力もあり、売り上げにつながったと伺っております。また、放送が終わった後も口コミで広がり購入された方が多くいらっしゃったと聞いて驚きました。テレビを通じていろいろな文化が広まると、テレビはまだまだ可能性があるんじゃないかな、と感じます。
――放送がきっかけとなり、このような広がりが生まれたことは一つのモデルケースになりそうですね。最後に、ローカル局として今後の展望をお聞かせください。
早川氏:地域に信頼されるメディアとして、少子高齢化や気候変動、災害などの課題解決に貢献していきたいです。StoryHubなどのツールを活用し、情報発信力を活かしながら、地域社会との連携を深め、新たなビジネスモデルの創出を目指してまいりたいと思います。ローカル局の意義を見つめ直し、地域のために取り組んでいくことが重要だと考えています。
早川氏の言葉からは、地方局の未来に対する強い思いと、それを実現するための具体的なアイデアが伝わってくる。最新AIの活用など、新しい技術や視点を取り入れながらも、地域に根ざしたメディアとしての役割を果たし続けたいという姿勢が印象的だ。
「アラ還」を自称しながらも、その眼差しは常に未来を見据えている。早川氏の挑戦は、ローカル局の新しい可能性を切り開いていくに違いない。
編成業務局長 早川英治さん


長野放送は、「NBS」の略称で長野県民に親しまれ、2024年4月1日に開局55周年を迎えました。地域で最も信頼され愛されるテレビ局を目指しています。ニュース番組『NBSみんなの信州』(月~金18:09~19:00)は同時間帯の県内民放ニュースで視聴率トップ、情報バラエティ番組『土曜はこれダネッ!』(毎週土曜日18:00~19:00)は放送開始20年など、自社制作番組が親しまれている。(https://www.nbs-tv.co.jp/)
12/31(火)放送『「むなしさ」と生きる~善光寺大勧進栢木寛照貫主ときたやまおさむ「心」の対話~』 年末に贈る、心豊かに生きるヒントとは